ひとりごと

つきみおが長文でひとりごとを言います

日記(場違い、ファッション、ブックカバー)

8/24朝走ったら涼しく、少し湿った空気の晴れ時々くもり

 

なんの間違いなのかこのドチャクソコミュ障うじうじマイペースの私は現職が営業というバリキャリじみた職種であるため、その関係で広告戦略のミーティングに呼ばれた。疑いようも誤魔化しようもなく場違いであった。口を開けば開くほどもう何も言わないほうがいいに違いないとわかっているのに何も言わないのも角が立つと思うとやめられず、喋りながらもうお家に帰らせてくれと思っていた。なんでこんなに何も考えていないんだろう。こんなことではいけないのに売り上げを伸ばすとか誰に何を売っているとかいうことに全然興味が持てない。営業なのに、営業なのに!もうやめてほしい。私の100倍営業に向いている人たちをきっと蹴落として私は今の職種に採用されたのだろうに、なんてザマだろうか。おうちにかえらせてくれ。

 

ところで、自分で言うのもなんだが、今日の私は可愛かった。昨日のショックが大きいのでいつもより少し可愛い格好をしていかなければなんだかやっていけそうにない気がした。後ろで三つ編みにした髪の毛も、なんとなくうまくいった前髪の感じも、この夏はまっているオレンジブラウンのアイシャドウにボルドーのアイラインを引くメイクもかわいく、そのことだけで今日は少し救われた。自分はかわいいと思い込むことが、かわいい何かを身に纏うことが、なぜこんなに心を落ち着かせてくれるのだろう。私は自分のことを身体も中身も気色悪いと思っているが、かわいい何かで私の表層を覆うことは、単なる物として被ることを超えてそれを私の身体として纏うことは、そのかわいい何かを通して私の気色悪さつまりは歪さ異質さを飼い慣らすことなのではないかと思ったりする。私にとってのファッションとは、私を私の異質さから解放してくれるミディウムのようなものなのだ。

 

朝、最寄りの駅でSpotifyを起動したら勝手にログアウトされていて、何かと思ったら不正アクセスによってアドレスを変えられていたのだった。日本では同じようなケースが多発しているらしく、対応がより早いという英語の窓口からサポートセンターに繋げてもらい、職場に着く頃には早くもアカウントを復旧してもらうことができた。サポートセンターのJohnさんに心からのお礼を申し上げた。私も、モノを売る営業としては碌でもないにせよ、お客さんから心からありがとうと言われるような営業ではありたいと思う。それにしても、私のアドレスとパスワードが外部に現に漏れているのだと思うと大変気味が悪くまた不安でもある。しばらくはさまざまなアカウントや決済に注意を払うことにする。

今読んでいる『オートフィクション』はドギツイ真っ赤な表紙の小説で、これを電車で読むことについて私は別になんの抵抗もないが、最近電車で本を読んでいる人はみな一様にブックカバーをつけているので、そういう人にとっては気になるのかもしれないと思った。なぜみんなブックカバーをつけているのだろうか。本を大切にしているからだろうか(大切なことである)。それとも、自分が何を読んでいるのか周りに知られたくないのだろうか。私は非常に趣味が悪いと言えるかもしれないが、本を読んでいる人を見つけると、どうしても何を読んでいるのか気になってしまう。そういう人が気持ち悪くてみんな隠しているのかもしれない。ごめんなさい。少し前の休日、新宿に向かう中央線に乗っていたときのことを思い出す。私はそのときレヴィナスの『存在の彼方へ』を読んでいたのだが(そして結局挫折したのだが)、隣に座っていた青年が徐に取り出した本がなんと佐藤義之だか誰だかのレヴィナス解説本だったのである!そりゃレヴィナスなんてマイナーな哲学者でもなんでもないし、世の中にレヴィナス読者など星の数ほどいるだろうし、いやしかしそれにしても、話題の新刊本ならいざ知らず、この空き時間といえばスマホという時代に、たまたま同じ電車の同じ車両の隣同士に乗り合わせた人間が、同じ20世紀フランスのいわばやや時代を過ぎた感すらあるユダヤ人思想家についての本を持ち合わせているなどという偶然がどれだけの確率で発生しうるだろうか?とはいえ話しかけるのも躊躇われ(なんと言えばいいのかわからないし、仮にレヴィナスについての話なんて始まってしまったら私の手には負えないのである)、私は心の中で「ねえねえあなたもレヴィナス?私もレヴィナス!」と呟きながら新宿駅で下車したのだが、こんな偶然に出会えたのもひとえに私と彼がどちらもブックカバーをしない人間であったからと言えよう。洋服を着るみたいに、とは言わないけれど、家の中だけで済ますこともできる読書をあえて公共の場でするという行為がもつある種の昂揚感、読書をする他者を見かけたときのある種のときめき、あれはきっとブックカバーを外すことによってしか得られないモノなのではないかしら。